医療系の国家試験には、合格率が9割を超えるものがいくつもあります。 これだけ見ると、受かって当たり前の試験のように思えます。
ただ、この数字には、受験者のほとんどが新卒者だという前提が隠れています。 学校を出てすぐ受ける人と、一度落ちて翌年また受ける人とでは、 同じ試験でも合格率がまったく違います。
看護師国家試験を例にします。 直近の回(第115回)の全体の合格率は88.3%でした。 ただ、受験者59,614人のうち 90.6%が新卒で、全体の合格率は新卒者の結果にほぼ左右されます。 新卒だけを見ると94.1%、既卒だけを見ると32.3%です。
新卒と既卒で、どれだけ違うか
下の表は、新卒と既卒を分けて公表している10試験について、 収録している最新の回の数字をまとめたものです。差の大きい順に並べています。
| 試験 | 回 | 新卒 | 既卒 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 視能訓練士国家試験 | 第56回 | 98.5% 766/778 | 26.9% 7/26 | 71.5pt |
| 臨床検査技師国家試験 | 第72回 | 93.3% 3,793/4,064 | 29.1% 183/629 | 64.2pt |
| 診療放射線技師国家試験 | 第78回 | 83.8% 2,585/3,084 | 20.1% 85/422 | 63.7pt |
| 看護師国家試験 | 第115回 | 94.1% 50,862/54,036 | 32.3% 1,804/5,578 | 61.8pt |
| 理学療法士国家試験 | 第61回 | 94.9% 10,782/11,366 | 35.0% 374/1,070 | 59.9pt |
| 保健師国家試験 | 第112回 | 89.9% 6,392/7,109 | 30.7% 110/358 | 59.2pt |
| 歯科医師国家試験 | 第119回 | 80.2% 1,482/1,849 | 27.8% 275/988 | 52.3pt |
| 作業療法士国家試験 | 第61回 | 96.6% 4,636/4,801 | 49.8% 311/625 | 46.8pt |
| 医師国家試験 | 第120回 | 94.7% 8,716/9,205 | 54.6% 423/775 | 40.1pt |
| 助産師国家試験 | 第109回 | 99.8% 2,014/2,018 | 92.9% 26/28 | 6.9pt |
9試験で、差が20ポイントを超えています。 いちばん大きいのは視能訓練士国家試験の71.5ポイント、 いちばん小さいのは助産師国家試験の6.9ポイントでした。
3つに分かれている試験もあります
薬剤師国家試験は、新卒・既卒の2つではなく、 6年制課程の新卒・6年制課程の既卒・それ以外の3つに分けて公表されています。
| 区分 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 6年制新卒 | 7,781 | 6,711 | 86.2% |
| 6年制既卒 | 4,871 | 2,013 | 41.3% |
| その他 | 122 | 25 | 20.5% |
この差を、どう受け取るか
差が大きいのは事実ですが、「既卒だと受からない」という意味ではありません。 数字の読み方として、気をつけたい点が3つあります。
1つめは、既卒の人数が新卒よりずっと少ないことです。 上の表でも、既卒の受験者数が3桁にとどまる試験がいくつもあります。 人数が少ないと、合格率は回ごとに大きく動きます。1年分だけを見て判断してよい数字では ありません。
2つめは、既卒には、事情の違う人が混ざっていることです。 前年に落ちて1年かけて勉強した人も、学校を出てから何年かたって受け直した人も、 仕事をしながら受けた人も、同じ「既卒」に入ります。 この区分は学校を出た時期で分けたもので、準備の量で分けたものではありません。
3つめは、新卒の合格率が高いのは、受験前の段階があるからです。 養成校では、国家試験に向けた対策が授業に組み込まれています。 学校側が合格率を気にするため、合格の見込みがある人の受験が特定の年に集中しやすい、 という事情も指摘されています。
自分がどちらで数えられるか
受験を考えるときに見るべきなのは、公表されている全体の合格率ではなく、 自分が入る区分の合格率です。
いま養成校にいるなら、参考になるのは上の表の「新卒」の数字です。 一度受けて再挑戦するなら、「既卒」の数字です。全体の合格率が9割でも、 既卒にあたる人の合格率はそれよりかなり低くなります。
逆に言えば、在学中に受けるその1回が、最も条件のよい受験機会だということでもあります。 ここに挙げた試験は年1回のものがほとんどで、次は1年後になります。
各試験の区分別の数字は、各試験のページでも年ごとに見られます。 収録しているのは11試験・124回分で、 すべて実施団体や所管官庁が公表した資料に基づいています。